台風が接近中の強風の中、地元兵庫県三木市で50年以上小刀専門の鍛冶をする「池内刃物」さんを訪問してきました。
初代の池内昭三さんは、兵庫県技能顕功賞受賞など各方面で認められる大変優れた技術を持たれた鍛冶屋さんで、その切出し小刀は、国内だけではなく、ドイツなどヨーロッパのバイオリンや家具職人に愛用されています。
現在、社長で二代目の久徳さんと弟さん、そして三代目の広海さんの4名が鎚をふるい伝統の技術を受け継いでいます。
二代目久徳さんが、小刀の鍛造を見せてくれました。
まずは、鋼を小刀用に切り出すところからです。
炉で赤めて、叩き伸ばし締めて、適当な大きさにタガネで切ります。
次に母材の軟鉄に鍛接材を付けて鋼をのせて、炉で赤め鍛接します(くっつけます)。
これを再度赤めベルトハンマーで叩いて伸ばしていきます。
ここで今回初めて知ったのですが、小刀は1度に2丁分鍛造すると言うことです。
つまり母材の先端より少し手前に、鋼をのせくっつけて伸ばしていき、その真ん中を切り2丁にします。
ここで、斜めに切り分けているのですが、この斜めの部分が刃になるのではなく、反対側の真っ直ぐな方が、刃になります。
赤めては、ハンマーで叩いていくうちにみるみる形が整ってきました。
(まるでアメ細工か何かのようで、本当にみごとです)
この後、冷間鍛造をして組織を締め、荒研磨、焼き入れ、水研磨と作業は進みます。
1丁の小刀を作るのにもすごく手間暇がかかっています。
これは、母材に古鉄(明治など戦前の鉄)を使った、『木目 鮎小刀』
錬鉄と呼ばれる古い鎖などの鉄には、不純物が多く含まれており、独特の筋目が現れ何とも言えない雰囲気を醸し出します。
また、さくさくと砥石によくかかり研ぎやすいのが特徴です。
ストックされた、古鉄の鎖。
主に英国で作られた、鉄としては不純物が多い粗悪なものですが、それを赤めて母材に作っていきます。
左から社長の弟さん、社長で二代目の久徳さん、初代昭三さんと三代目の広海さん
初代の昭三さんは、もちろん今も鎚をふるい、若い人にハッパをかけているそうです。
すごく温厚で素朴な方なのですが、そこは昔気質の職人、仕事になるとすごく厳しいそうです。